窓から舞い込んだやわらかな風が白いレースのカーテンを揺らし、波打ちながら金色の陽光に縁どられている。
心地よい眩しさとあたたかさ。
私は窓際の白いベッドでまどろんでいた。
こんなに穏やかな気持ちでゆっくりと眠れたのは、いったいいつ以来だろうか!?
カツ カツ カツ カツ
マンションの長い外廊下の靴音が近づいて来て、私の部屋のドアの前で止まった。
ピンポ~~~ン
ドアチャイムが鳴っている。
まだ寝ていたい。
ここには誰も来るはずはないから、セールスか何かだろうと無視を決め込み、もう一度お布団にもぐりこんだ。
白いシルクのパジャマとリネンの肌触りがなんとも心地よい。
すると、ガチャガチャとドアノブを回す音がする。
開かないと分かると、ドンドンドンとドアを叩いている。
嫌な予感がしたのでベッドを抜け出し、足音をたてないようにそおっと玄関近くまで歩いて行った。
ドアの外で声がする。
「居るのは分かってるんだ。開けろよ。」
「俺をバカにしているのか!?出て来いよ。」
悪態をついているのは、別れたDVヒモ夫だ。
どうしてここが分かったんだろう!?
密かに引越し、ここに隠れていたのに・・・
私はそのまま玄関わきのリビングのソファーの陰に隠れた。
白い壁、白いソファー、白いダイニングセット。
何から何まで不自然なほど白一色で埋め尽くされている。
シンクの銀色だけが異様に光って見える。
暫く息を殺していると、諦めたのか足音が遠ざかって行った。
ソファーの陰から暫くの間玄関を凝視し、耳を澄ませていた。
人の気配は感じないし、何も聞こえない。
私はホッと息を吐きだし、そうっとソファーの陰から出て来た。
すると、その時だった。
いくつもの足音が聞こえたかと思うと、不意に玄関ドアがバタンと開いた。
黒い服の男たちが靴も脱がずに、どやどやと部屋に入って来た。
元夫がにいっと薄ら笑いを浮かべながら、男たちの後から入って来た。
私はじりじりと後退り、身を翻し駆けた。
右手にキッチンのシンクが光るのを見ながら、ベッドを乗り越え、突き当りの窓までたどり着いた。
でも、逃げ場はない。
ここはマンションの4階。
真下には公園の景色が広がっている。
腰高窓のガラス戸は開いていて、私は手すりに背を預け弓なりになっていた。
もうダメ!落ちる!
頭の中で自分の声が響く。
跳ぶ?
追い詰められて逃げ場がない!
こんな夢を最近やっとみなくなった。