真っ白い隠れ家~DV体験談(序章)

  • 2020年11月9日
  • 2021年8月14日
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窓から舞い込んだやわらかな風が白いレースのカーテンを揺らし、波打ちながら金色の陽光に縁どられている。

心地よい眩しさとあたたかさ。

私は窓際の白いベッドでまどろんでいた。

こんなに穏やかな気持ちでゆっくりと眠れたのは、いったいいつ以来だろうか!?

カツ カツ カツ カツ

マンションの長い外廊下の靴音が近づいて来て、私の部屋のドアの前で止まった。

ピンポ~~~ン

ドアチャイムが鳴っている。

まだ寝ていたい。

ここには誰も来るはずはないから、セールスか何かだろうと無視を決め込み、もう一度お布団にもぐりこんだ。

白いシルクのパジャマとリネンの肌触りがなんとも心地よい。

すると、ガチャガチャとドアノブを回す音がする。

開かないと分かると、ドンドンドンとドアを叩いている。

嫌な予感がしたのでベッドを抜け出し、足音をたてないようにそおっと玄関近くまで歩いて行った。

ドアの外で声がする。

「居るのは分かってるんだ。開けろよ。」

「俺をバカにしているのか!?出て来いよ。」

悪態をついているのは、別れたDVヒモ夫だ。

どうしてここが分かったんだろう!?

密かに引越し、ここに隠れていたのに・・・

私はそのまま玄関わきのリビングのソファーの陰に隠れた。

白い壁、白いソファー、白いダイニングセット。

何から何まで不自然なほど白一色で埋め尽くされている。

シンクの銀色だけが異様に光って見える。

暫く息を殺していると、諦めたのか足音が遠ざかって行った。

ソファーの陰から暫くの間玄関を凝視し、耳を澄ませていた。

人の気配は感じないし、何も聞こえない。

私はホッと息を吐きだし、そうっとソファーの陰から出て来た。

すると、その時だった。

いくつもの足音が聞こえたかと思うと、不意に玄関ドアがバタンと開いた。

黒い服の男たちが靴も脱がずに、どやどやと部屋に入って来た。

元夫がにいっと薄ら笑いを浮かべながら、男たちの後から入って来た。

私はじりじりと後退り、身を翻し駆けた。

右手にキッチンのシンクが光るのを見ながら、ベッドを乗り越え、突き当りの窓までたどり着いた。

でも、逃げ場はない。

ここはマンションの4階。

真下には公園の景色が広がっている。

腰高窓のガラス戸は開いていて、私は手すりに背を預け弓なりになっていた。

もうダメ!落ちる!

頭の中で自分の声が響く。

跳ぶ?

追い詰められて逃げ場がない!

こんな夢を最近やっとみなくなった。




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